ハンディキャップ
小松校
最近は定期テストや模試の前の期間はいつになく時間的にも、精神的にも追い込まれる人が増えている印象です。
「もっとはやくやっておけば…でもなかなか時間がなくて…」「テストになると自分の心の弱さが出てしまい、緊張で実力が出せないんです…」こうした悩みをたくさんの生徒から聞いています。
性格的な面もあるでしょうから、こう改善すればいいと簡単に済ませられる話でもありません。私は性格やハンデこそが個性というものなので無理に変えるべきではないと思っています。
たとえば世間では「おしゃべりな」人が注目を浴びたり、「勇気がある」人が称賛されたりする傾向がありますが、「おしゃべりな」人ばかりでは意見の収拾がつきませんし、「勇気がある」だけでは無鉄砲な行動につながるかもしれません。「寡黙で」「慎重な」人もいてくれるからこそ世の中はバランスがとれるので、どんな性格やハンデを負っている人も、適材適所でいてもらわなくてはならないかけがえのない存在なのです。
しかし当人としたらどうにか変えたいと思っている真剣な悩みなのでここで一つヒントとなる偉人の考えを紹介したいと思います。
昭和の戦前から戦後にかけて一代で松下電工(現:パナソニック)を築いて成長させ「経営の神様」とうたわれた松下幸之助氏は自身が成功した理由を3つ紹介しています。それは①貧乏だったこと、②学歴がなかったこと、③体が弱かったことの3つです。一見どれも社会で成功しない理由として考えられがちですが、松下幸之助氏にとってはちがいました。
「家が貧しかったために、丁稚奉公に出されたけれど、そのおかげで幼いうちから商人としてのしつけを受け、世の辛酸を多少なりとも味わうことができた。生来体が弱かったがために、人に頼んで仕事をしてもらうことを覚えた。学歴がなかったので、常に人に教えを請うことができた。(中略)こういうように、自分に与えられた運命をいわば積極的に受けとめ、それを知らず識らず前向きに生かしてきたからこそ、そこに1つの道がひらけてきたとも考えられます」(『人生心得帖』PHP文庫)」
人間だれしもコンプレックスやハンディキャップを抱えています。順風満帆な人生の人はいないでしょう。
順風満帆に見える人でも内面では何かしら人に言えない悩みの一つを抱えているものですし、楽な道を選ぶことで苦労を避けてきた人は、いざ人生における大きな問題に直面した時に立ち向かうだけの覚悟も実力もつかないでしょう。「時間がないから」という人は「時間がないからこそ、他の人よりも負けないように集中して時間を効率的に使おう!」、「心が弱いから」という人は「心が弱いからこそ自信がつくぐらい徹底的に努力しよう!」とネガをポジに反転してみる視点も大事ではないでしょうか。
私自身、高校時代はテストは満点でなければ誰からも褒められることもなかったので、満点以外価値がないと思いこんでしまう極度の“完璧主義者”で、テストのたびに臆病で神経質になり、間違えるたびにイライラして自信を失い勉強に手がつかなくなるような困った人間でした。しかし今考えると完璧を目指すために細心の注意を払って勉強していたことはそんなに悪いことではなかったように思えます。
テストに対して「臆病になる」ことで緻密な勉強計画を立てられるし(この分野は出題されたら大丈夫だろうかと自問自答して徹底的に追い込むことをしていました)、「完璧」を目指すことで雑に教科書や参考書を読むこともなくなります(理解していないところはないだろうかと本の隅々まで洗い出しました)。
メンタル的には胃がキリキリして当時は非常にしんどかったのですが、社会に出てからも試される競争の機会というのはいくらでもあります。あの時テスト勉強に慣らされたからこそ、資格試験などにもほぼ負けなしで常に打ち勝つ戦い方が分かるようになりました。ちなみにいまはさすがに勉強でも仕事でも「完璧主義」は子どもじみた独りよがりな発想だと気づいたので捨て去ることができました(どうやったとしても万事は完璧にはなりませんし、多くの場合は自分のことを棚に上げて他人にも厳しく結果を求める悪い癖につながるので)。
苦しい経験や悩みがあればこそ、それらを燃やしてポジティブなものに昇華することができる。「だからこそ」を使うことで、どんなネガティブな要素もポジティブに変えることが可能なのだから、まずは安心して自分の性格やハンデを愛おしいものとして受け止め、ポジティブに考えてみませんか?
