受験の現実③~中学受験組の脅威~
小松校
指導経験から見てきた「受験の現実」を様々なテーマを切り口に論じてみたいと思います。前回の記事はこちら。
進路や受験について真剣に考えている生徒の方、また受験を終えて久しい保護者の世代の方にも、現在の受験のことについて基礎知識をお伝えすることも目的としております。
何事にも例外というものは存在しますので、あくまでもこういった傾向があるのではないかと考える個人の主観的な感想として、参考材料程度にお考えいただければ幸いです。
また不定期の連載となりますことをご容赦ください。
今回のテーマは「中学受験組の脅威」についてです。今年の東大入試について日本経済新聞に以下のような記事がありました。
「今年の東京大学の入試は理系の数学が難しかった。理系数学は大問6題からなるが、数学が得意で理科1類に合格した生徒も、『まともに解けたのは大問2だけ。ほかは部分的にしか手が出なかった』と振り返る。例年は数学を得点源にする生徒なら4、5問は完答できる。今回は3問完答すら厳しいだろう。私見だが手も足も出ない難問奇問ばかりだったわけではない。時間をかければ解ける問題は多く、要するに『極めて高い処理能力と早解きの力』が求められた。『難易度が高い』の正体はおそらくこれで、いくら数学が得意でもスピードが伴わないと得点が伸びない試験だったといえる。
こうした中、開成高校の東大合格者が197人と前年より47人も増えたことが注目を集めた。予備校関係者からは『今年の開成は浪人生が少ない』、つまり現役合格が多いと聞いた。
一つの仮説がささやかれている。今年の現役生が挑んだ6年前の開成中学の入試は算数が非常に難しかった。『算数・数学への適性が極めて高い生徒が例年より多くそろっていたのでは』。数学では早期教育が重要ということなのか。」(日経電子版 3月28日付 「『東大数学の難化』と『開成からの合格増』の関係」)
開成中学・高校とは言わずとしれた中学受験における東京の男子御三家のうちの一校です。毎年2月になると過熱する首都圏の中学入試事情はその功罪も含めてニュースでもよく話題になります。難関中学の入試は「うちの子は通っている小学校のテストで毎回満点取れているから、もしかしたら受かるかも」といった淡い期待で合格するような夢みたいなことはありえません。首都圏の難関中学の受験の内容がオリンピックレベルだとすれば公立の小学校で習う内容は地域のサークル活動のようなレベル(部活動ですらない)で、そもそも競技性(勉強の方向性)が全くちがいます。塾を利用しないで合格することはまず不可能で、だいたい小学4年生ごろから本格的に受験勉強をはじめますが、塾通いであれば一般的な6年生の勉強時間は平日は5時間、土日は特訓のため毎週それぞれ10時間近く缶詰状態で演習します(小学生にして大人よりも労働しているとよく言われます)。それぐらい血のにじむ努力をしても第一志望に合格できるのは3~4人に一人という受験戦争の厳しい現実があります。
そうは言っても、中学入試は所詮、中学に入るまでに小学生に知っておいてほしい内容ぐらいでしょう、と思われる方も多いでしょう。しかし、一説には中学入試の範囲はなんと”高校2年で習うレベルの範囲”にまで及ぶと言われます。この説は中学入試を経験している私も実感として正しいものだと頷けます。中学入学後、英語や数学はある程度イチからのスタートですが、理科や社会は中学で新しく学ぶことがそんなになかったのを覚えています。「社会」の試験で「小選挙区比例代表並立制」や「違憲立法審査権」といった用語を漢字で答えられない中学入試受験者はまずどこの私立中学にも受かりません。中学受験を経験せずに公立中学に進学した友人が中学入試の「理科」では当たり前に出題される「力学」や「水溶液」の問題を高校入試のために中学3年になって”今はじめて(!)”勉強している、と聞いて驚いた記憶があります。われわれはすでに中学3年時には高校内容に入っていたからです。
前述の開成高校含め中学受験組(いわゆる「中受組」)が数学が得意になる傾向が強いのも、小学生の時に学校では習わないような「図形」や「整数問題」について徹底的に考えさせられ、時間内に処理する訓練を施されるからです。これは一般的な高校生が高1の段階で「数学A」の分野として初めて本格的に習うものですが、小学生の段階からすでに大きな差がついてしまっていると言えます。大学入試は全国勝負ということもあり、一見努力次第で同じ土俵で戦える公平さがあるかのように見えますが、こうした「中受組」のフライングスタートが横行しているのが実情ですし、それは別に保護者と本人の意識的な頑張りなのでズルでも何でもありません。いざ高校生になってから本格的に勉強をはじめ、難関大学や医学部を目指したいというのはやはり3年間の頑張りだけでは分が悪すぎると思います。小学生から特殊な訓練を受けていて,勉強することが当たり前だと感じる”受験のエリート”に対抗するには相当な覚悟が必要でしょう。
「何も小学生のようなはやい段階から追い込んで勉強させなくても…」「小学生にはスポーツや遊びが優先だ」という意見もあるかと思いますが、何も勉強だけをさせる必要があるわけではありません。小6になるまでは遊びやスポーツと両立しながら勉強を続ける人がほとんどです。「勉強させすぎることがかわいそう」ということと比較し、「勉強させないであとから進路の幅をせばめてしまうほうがもっと本人にとってかわいそう」だと個人的には思います。
石川県内でも中学入試・中高一貫教育の機運が高まっています。様々な学年を見てきましたが早期教育こそが最も教育効果が高いのは間違いありません。実際に中学入試を受験するか否かに関わらず、また仮に入試に失敗したとしても、その時は辛くともあとになって勉強から得られるものはたくさんあります。まずは暗記力、読解力、計算力、思考力といった基礎的な学力、また強制的に長時間勉強させることで身に着く集中力や肉体的なスタミナ、そして人生の早い段階で「あの時あんなに頑張ることができたんだから今回だって頑張ることができる!」という自信と精神的な粘り強さ。「中受組」は大学受験の時より中学受験の時のほうがはるかに精神的に辛かったと口を揃えて言います。
中学生や高校生のみなさん!小学生だって夏は毎日10時間勉強しているのですから、まさか「精神的に大人な」君たちができないわけはないですよね?多少地域内で勉強が得意でもそれは「井の中の蛙(かわず)」でまだまだ全国には「努力の鬼たち」がいます。少なくとも努力をしない者には道は拓かれません。この夏、誰よりも自分は勉強したんだ!、と胸を張れる熱い夏にしようじゃないですか🔥

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